飲食店のお客様からの相談事例 もくじ

イメージ画像ここでは、実際に飲食店のお客様から相談いただいた一般的な事例をUPしていきます。「社会保険労務士ってこんな仕事もやるのね」と実感していただければと思います。

退職金制度について
社員の労働時間について
社員の基本給と売上連動の営業手当
健康診断
社員の独立支援制度、FC化

【飲食店】社員退職金について ~お客様相談事例~

飲食店の社員の退職金について◆社長の想い
・今いる社員が定年になる20年後くらいにはある程度の退職金を出してあげたい。
・現在、退職金の制度は作っていないので制度化したい。

◆退職金制度
20年前くらいは社内積立ての退職金制度を充実させている中小企業も多かったんですが、今は、こういう時代なので、社内積立ての退職金制度を新たに設ける企業は減っています。退職金制度は作ったけど、お金はプールしていなかったり、別の財源に当ててしまったりして、実際に支払う際に大変なことになるというのはよくある話です。

今回の場合は、社内積立より、外部で積み立てるほうがよいと判断し、中小企業退職金共済制度(中退共)と民間の保険会社の任意保険を勧めました。このケースでは、社長に信頼できる保険会社の知り合いがいなかったので、信頼できる保険会社の方をご紹介し、中退共の制度と比べて、検討してもらいました。ちなみに中退共は次のようなデメリットもあるので、強くはお勧めしませんが。

◆中退共制度の特徴
中退共制度は、安全且つ簡便な中小企業向け退職金支払準備制度として国がやっているものですが、デメリットも多いので注意が必要です。

≪メリット≫
・仕組みが単純でわかりやすい。
・運用の責任がないため、積立不足を負担するリスクがない。
・個人単位で掛け金が設定できる。

≪デメリット≫
・企業規模で加入要件がある(中小企業のみ)。
・利回りが確定しているが、1%(利回りは当面上昇することが見込めない。法律で改訂されることあり)。
・掛け金は最低でも5,000円(最大30,000円)。
・1年以内での退職は掛け捨て。1年以上2年未満の場合は、掛け金を下回る。
・解雇でも退職金は支給される(懲戒解雇の場合に認定を受けて、減額も可能)。
・途中で脱退できない。

◆任意保険(生命保険)の特徴
退職金制度の積立方法として、中退共と並びよく利用されるのが生命保険。生命保険の種類は多岐にわたり、色々な商品があります。保険会社やプランによっても異なりますが、一般的には次のようなメリット・デメリットがあります。

≪メリット≫
・従業員に支払う退職金の額を自由に決定できる。
・掛け金変更や退職金以外の目的への転用など導入後の融通性が高い。

≪デメリット≫
・生命保険の場合、年齢、健康上の問題、病歴等により保険への加入が限定される。
・早期解約すると解約返戻金が元本割れする可能性がある。
・長期にわたり保険料を支払う必要があるため、定期的に資金が必要。
・予定利率、保険金等の変更等の他、保険会社が破たんすることがある。

中小企業退職金共済制度(中退共)
会社が毎月中小企業退職金共済に従業員ごとの掛け金を支払い、従業員が退職した際に、退職した従業員自身が中退共に退職金を請求して、退職金を受け取る制度です。

【飲食店】社員の残業・労働時間について ~お客様相談事例~

【飲食店】社員の労働時間について◆社長の想い
・社員については今まで労働時間の管理もできていなかったが、健康面を考えると労働時間を管理し、労働時間を減らしたい。
・タイムカードで打刻された労働時間ではなく、休憩等を除いた正しい労働時間に対する残業代を支払いたい。

◆労働時間の管理
社員の労働時間は、1か月で250時間~300時間くらいの飲食店が多いと思います。そんな現状の中で、残業代が支払えない→労働時間の把握をしない→タイムカードを打刻しない→従業員も労働時間を意識しない、という悪循環につながっていると思います。飲食店経営者の多くは、この悪循環とは別の意識で「社員の労働時間を減らしたい」「社員の負担を減らしてやりたい」と考えていると思います。

まずは、会社が労働時間を把握して、社員に業務改善を促すことが必要です。言葉にするのは、簡単ですが、実際やるとなると本当に大変です。飲食店経営者自身が本気になって根気強く推し進めなければ改善はありません。私自身、サラリーマン社労士時代に店舗の労働時間削減を任されたことがありますが、うまくいかないこともありました。しかし、売上を減らさずに労働時間を削減することができれば、差別化にもつながりますし、社員の定着率も大幅にアップします。すぐに答えが出ることではないので、現在もご相談いただいた社長と一緒に試行錯誤しながら、労働時間削減を進めています。

◆タイムカードの時間=労働時間とはいえない?
タイムカードに打刻したすべての時間が労働時間になる、その時間に応じて残業代を支払わなければならないと思っている飲食店の経営者は多いと思います。しかし、そうではないのです。タイムカードに打刻された労働時間は、あくまで有力な参考資料という位置づけです。タイムカード以外に残業命令書や業務報告書等で実際の労働時間を立証できるのであれば、タイムカードの記録=労働時間とはならないのです。

また、タイムカードによる労働時間算定は、絶対でないことを示した国会答弁(平成16年3月2日「衆議院議員長 長妻昭君提出 国のタイムカード導入及び賃金不払い残業に関する質問に対する答弁書」)があることも社労士業界ではよく知られています。労働時間が長いからこそ、形式的な労働時間ではなく実態に即した労働時間を把握し対策を打つことが必要だと思います。

【飲食店】社員の基本給と売上連動手当 ~お客様相談事例~

【飲食店】社員の基本給と売上連動手当◆社長の想い
・社員や店長は店の売り上げに応じた給与を支給したい。
・今までは基本給の定期昇給をしていたがこれを機に変えたい。

◆基本給
ここ数年、飲食店などのサービス業の基本給をあえて低く設定することが多くなっています。2008年のマクドナルドの名ばかり管理職問題で残業に対する意識が変化し、残業代の基礎になる基本給の単価を抑える傾向になっているのがその要因です。店長クラスでも基本給17万円の飲食店もけっこうあります。残業代対策で、固定給の単価を下げて、今まで支払えなかった残業代をしっかり払うという給与に変更する飲食店も増えています。この店舗でも、基本給などを見直し、残業代を支払えるような給与体系に変更しました。

◆売上連動の手当の導入
売上連動の手当の導入し、利益を上げている店長に対し、たくさん給料をあげたいという飲食店は多いと思います。賞与で支給する場合もありますが、この事例では毎月の支給する新たな営業手当を導入しました。今まで、売上連動の手当は導入していなかったのですが、ここ数年で店長によって店の売上に差が出てきたことで導入を決意したそうです。売上連動手当の種類は次のようなものが多いです。

・毎月の売上の○%
・毎月の利益の○%
・毎月の目標達成に応じ、○万円~○万円
1日の売り上げごとに○○円と設定している飲食店もあります。

今回のケースでは、社員自身が目標を追うことができるわかりやすい制度がよいということで、月の売上目標を5段階で設定し、段階に応じて金額を支給する形にしました。社長としては、FLコスト(原価や人件費)も反映させた手当を支給したいという想いがありましたが、複雑にすればするほど社員が目標を追いにくくなるということで、単純な制度にしたという経緯があります。売上目標をアルバイトスタッフまで意識させ、全体で目標を追いかける風土をつくり、結果が出るようになれば、アルバイトにも賞与を支給したいとのことです。

【飲食店】健康診断について ~お客様相談事例~

【飲食店】健康診断について◆社長の想い
・労働時間が長いこともあり、社員に健康診断を受けさせたい。
・店の売り上げもある程度安定したことで、数年前にやっと社会保険に加入できた。これをきっかけに段階的に労務管理を見直していきたい。
・実は、自分(社長自身)も長年健康診断を受けられていないので、一緒に受けたい。

◆健康診断
どんな飲食店でも、従業員に対して毎年1回以上の定期健康診断が義務付けられています。ただし、実施している飲食店は少ないようです。やらなくてはいけないことはわかっているが単にきっかけがなかったり、「初めて行うので手間がかかりそう」ということから、後回しになってしまいそのままになってしまっていることが多いのかなと思います。

◆健康診断の助成金は?
健康診断には次のような助成があります(平成25年2月現在)。今回のケースでは、協会けんぽの指定病院を予約方法などをご案内し、35歳以上の従業員は助成を受け、それ以外の従業員は、一般的な健康診断(5,000円程度)を受けてもらうことにしました。

◇35歳以上の健康保険加入者(協会けんぽの場合)
胃カメラ(バリウム)検査もある生活習慣病予防検診(一般検診)が6,843円(平成24年度)で受けられます。年度ごとに指定の病院が決まっていますが、名古屋市内だけでも約60の病院があるので、比較的受けやすいと思います。毎年4月から各病院で健康診断の受付を開始しています。3月下旬くらいに生活習慣病予防検診の助成が受けられる健康保険加入者のリストがけんぽ協会から送られてきます(このリストがなくても受けられます)。

病院ごとに受けられる人数が決まっており、病院によっては、今年度分(平成25年3月末受診分)の生活習慣病予防検診の受け付けは終了している可能性もありますので、協会けんぽのホームページから愛知県内の生活習慣病予防健診実施機関 一覧表でお近くの病院にお問い合わせください。

協会けんぽHP

◇均衡待遇・正社員化推進奨励金(健康診断制度)
パートタイム労働者・有期契約労働者に対する健康診断制度を導入し、実際に延べ4人以上に実施した事業主に40万円(事業規模により30万円)を支給する助成金制度です。

≪主な要件≫
(1)健康診断制度を就業規則等に定めること
(2)制度導入から2年以内に、対象となる健康診断を延べ4人以上に実施したこと
(3)健康診断の経費について、雇入時健康診断と定期健康診断は全額、人間ドックと生活習慣病予防検診は半額以上を負担することが明確にされており、実際に負担していること

◆健康診断費用や受診時の給与支払いは?
健康診断の費用は会社が負担すべきものとされています。法的には、健康診断費用は労働者に負担させることが違法とまでは言い切れませんが、会社が実施義務を負う定期健康診断等は会社が費用を負担すべきというのが行政の見解でもあります。

一方で再検査や精密検査が必要となった場合の費用は、会社側の取り決めによります。健康診断の再検査のほとんどは、健康保険が使えることで、3割負担になるので、従業員さんに払ってもらっても全く問題ありません。健康診断を受診している時間の賃金は、支給しなくてもOKです。通常の就業時間中に健康診断を受ける場合は、賃金を支給する会社が多いです。

【飲食店】社員の独立支援制度、FC化 ~お客様相談事例~

【飲食店】社員の独立支援制度、FC化◆社長の想い
・現在居酒屋3店舗を運営している。今年と来年1店舗ずつ出店し、5店舗体制にしたい。
・5店舗になったら、店長を統括するマネージャーを置くことを考えている。

◆多店舗展開飲食店とマネージャー制度
3店舗以上になると社長ひとりではフォローが難しくなり、店長の能力次第で売り上げが大幅に変わってしまうということがよくあります。そうなる前に店舗スタッフと売上UPのフォローするマネージャー職や社長の右腕という人財が必要になると思います。とはいうものの、マネージャーに適任な人材というのはなかなか見つかりません。

多くの飲食店では、売上成績のよい店長、人材育成がうまい店長をマネージャー職に昇格させます。この場合、すぐにマネージャー職をこなせる人材は3割くらいだと思います。これは、能力がないというわけではなく、店長とは仕事がまったく違うことが原因です。次の表に店長とマネージャーの仕事内容の違いをまとめました。

店長の仕事 マネージャーの仕事
自分が動く 人を動かす
店という居場所がある 決まった居場所がない
売上目標を達成する 売上目標を作成する
現場を見て、店舗の状態を把握する 報告や売上数値から店舗の状態を把握し、分析する
売上が求められる 売上と人材育成が求められる
成果が定量的で明確(売上) 成果が定性的で不明確
業務内容が明確 業務内容が不明確(何をしていいのかわからない)

マネージャー職は、今までの店長職とは仕事内容が異なる上に成果もわかりにくいので、自分のやっていることが結果につながっているかがわからないというマネージャーも多いでしょう。特に自分が率先して動いて売り上げてきた店長はマネージャーになって苦労することが多かったりします。一方で、社員やバイトをうまく動かして、一緒に動いて売上を上げてきた店長は、マネージャー職もうまくこなしていくことがあります。

もっとも難しいのが、店長の適性を見抜いて、どの店長がマネージャーに適任か選ぶこと、そして、育てることでしょう。さらに苦労して育てても、マネージャーとしてのストレスから退職してしまったりすることも多いです。

この飲食店では、現在の店長からマネージャーに適任と言えるほどの人財が見つからず、外部から採用する方法も考えました。とにかく、マネージャー制度の導入は、マネージャーを育成する点で非常に大変だという話になりました。

◆マネージャー制度より社内独立制度?
結局、数年かけてマネージャーを育てるよりは、社内独立制度やFC化して、経営者の立場まで引き上げたほうが本人のためにも、会社のためにもよいのではないかという話になりました。「マネージャー職を設けるから、ヤル気ある人は昇格させます」というよりは、「社内独立制度を設けたので、社長になりたい人は」というほうがモチベーションは上がるのかなと思います。数年後を見据えながら、マネージャーを育てるか社内独立制度を導入するか、社長と検討を重ねています。

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